保育士資格は、子育て経験のある主婦・女性から伝統的に人気の高い資格です。しかし「人気」の中身を調べていくと、良い面だけでなく正直に伝えるべき課題も見えてきます。結論から言うと、保育士資格は「扶養内パートの求人が豊富で、育児経験を仕事に直結させやすい」という点では主婦に向いていますが、給与水準が全産業平均より低く、資格を持ちながら現場で働かない「潜在保育士」が100万人以上いるという構造的な課題も抱えています。この記事では、需要の実態、待遇の実情、学習の進め方、体験談、複業の可能性まで、一次情報に基づいて整理します。
主婦に保育士が選ばれる理由
保育士養成校や通信講座各社のコラムでは、主婦・子育て経験者が保育士資格を目指す理由として「自身の育児経験をそのまま仕事に活かせること」がしばしば挙げられています(生涯学習のユーキャン「主婦が保育士資格を取得するには?資格の取得方法や勉強のコツなどを詳しく解説」、NannyMedia「主婦が保育士資格を取得する方法や勉強のポイントを紹介」)。子どもの発達段階への理解や、日常のあやし方・生活リズムの整え方など、育児で培った実感を保育の現場で言語化しやすいという点は、未経験からのキャリアチェンジと比べたときの強みとして紹介されています。
加えて、保育士は国家資格であり一度取得すれば更新の必要がないこと、全国の保育園・幼稚園型認定こども園・学童保育・企業内保育所など勤務先の選択肢が幅広いことも、主婦層に選ばれる理由として挙げられています(日本児童教育専門学校「主婦でも保育士は目指せる?主婦に資格取得をおすすめする理由とメリットを解説」)。ただし、これらは資格の「取りやすさ・使いやすさ」に関するメリットであり、後述するとおり待遇面の課題とはセットで理解する必要があります。
扶養内パートでの需要と待遇の実態
有効求人倍率3.88倍という需要の高さ
保育士の有効求人倍率は2026年1月時点で全国平均3.88倍と、全職種平均(1.27倍)の約3倍の水準にあります(出典:こども家庭庁・厚生労働省の職業安定業務統計に基づく保育士バンク!「【2026年最新版】保育士の有効求人倍率は3.88倍!年次推移・都道府県別一覧と転職への活かし方」)。都道府県別では滋賀県6.57倍、奈良県5.50倍、京都府4.30倍、大阪府4.27倍など、地域によっては求人が特に集中しています。この数値は「保育士資格を持っていれば、扶養内パートであっても求人自体は見つかりやすい」ことを裏づけていますが、求人倍率の高さは同時に「人手不足が慢性化している」ことの裏返しでもある点は冷静に理解しておく必要があります。
時給相場と扶養内で働く場合の収入イメージ
時給相場は情報源によって幅があります。求人比較メディアでは「パート・アルバイトで時給800円台〜1,200円程度、派遣で時給1,000円〜1,500円程度」という水準が紹介される一方(「保育士の時給相場は?アルバイト・パート・派遣など働き方別に紹介」)、2026年度の統計に基づく別のまとめでは、パート保育士の平均時給を1,419円とするデータもあります(保育士バンク!「保育士の給料と年収はいくら?今後は?【2026年度】5.3%賃上げと処遇改善の仕組みを解説」)。地域・施設の種類(認可・認可外・企業主導型等)・経験年数によって差が大きいため、実際の求人票で確認することを推奨します。
扶養内で働く場合は、年収の壁(103万円・106万円・130万円等、制度改正により基準が変わることがあります)を意識して勤務時間を調整するケースが一般的です。以下は働き方別の収入イメージです。
| 働き方 | 時給・月給の目安 | 年収の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| パート(扶養内を想定) | 時給800円台〜1,419円程度(情報源・地域により差) | 103万〜130万円以内に収める働き方が中心 | 扶養の壁の基準は改正されることがあるため要最新確認 |
| 派遣 | 時給1,000円〜1,500円程度 | 勤務時間による | 施設・エリアにより差が大きい |
| 正社員 | 月給28万5,700円(平均、2026年度) | 427万6,300円(平均、2026年度) | 賞与含む。前年より約20万8,200円増(処遇改善の影響) |
| 全産業平均(参考) | ー | 保育士との差 月額約5万3,000円 | 2022年時点で約4万円まで縮小したが、その後再拡大 |
出典:保育士バンク!「保育士の給料と年収はいくら?今後は?【2026年度】5.3%賃上げと処遇改善の仕組みを解説」。処遇改善加算(ベースアップ手当・役職手当・基本給の底上げ)により賃金は上昇傾向にありますが、全産業平均との差は依然として残っています。資格全体の年収・将来性の詳細は、保育士の難易度・年収・将来性まとめでさらに詳しく解説しています。
潜在保育士が多い理由と現場復帰のハードル
保育士資格は取得しても、実際に保育の現場で働いていない「潜在保育士」が非常に多いという実態があります。令和4年版厚生労働白書に基づく調査記事によれば、令和2年10月1日時点で保育士登録者数は約167.3万人、うち従事者は約64.5万人にとどまり、残る約102.8万人(登録者全体の約61%)が潜在保育士に該当します(保育園専門のBPOお役立ちプロジェクト「なぜ潜在保育士は現場に戻らないのか?その理由と解決策を徹底分析」)。現職保育士より潜在保育士の方が多いという事実は、保育士資格を検討するうえで正直に知っておくべき数字です。
現場に戻らない・戻れない理由として、同記事や関連の転職メディアでは主に以下が挙げられています。
- 給与水準が他職種と比べて低いと感じる人が多いこと
- 長時間労働が常態化しやすく、子どもの命を預かる責任と体力的な負担が大きいこと
- ブランクによる不安(最新の保育方法・規則の変化に追いつけるか、職場の人間関係が心配等)
- 自分の子どもを長時間預けてまで働くことへの負担感(子育て中の保育士自身の両立の難しさ)
つまり「保育士資格を取ればすぐに理想の働き方ができる」わけではなく、待遇や労働環境の課題を理解したうえで、扶養内パート・時短勤務・企業内保育所など、自分に合う働き方を選ぶことが重要です。復帰支援制度(就職準備金の貸付等の自治体施策)も用意されているため、ブランクが不安な場合は自治体やハローワークの保育士就職支援窓口に相談することをおすすめします。
家事・育児と両立する学習法(科目合格制度の活用)
保育士試験の筆記試験は9科目あり、一度にすべてに合格する必要はありません。合格した科目は合格した年を含めて3年間免除が有効で、対象施設で一定期間・時間の勤務経験があれば最長5年まで延長できる制度もあります(出典:一般社団法人全国保育士養成協議会「筆記試験合格科目における合格科目免除期間延長制度について」)。この制度を活用すれば、「今年は3科目、来年は3科目」というように、家事・育児のスケジュールに合わせて数年計画で合格を積み上げる長期戦略が可能です。独学と通信講座、どちらが自分に合うかで迷う場合は、保育士は独学で取れる?通信講座との費用・期間比較で費用や学習期間の違いを整理しています。また、通信講座の受講費用を抑えたい場合は教育訓練給付金の対象講座を確認するのも一つの方法です(詳細は保育士で教育訓練給付金が使える講座一覧を参照)。
独学で合格した体験談では、まとまった学習時間を確保しにくい主婦・子育て中の方ならではの工夫が紹介されています。例えば、子どもが寝ている間の時間だけを使い、1日平均3時間程度の学習を数ヶ月間継続して一発合格したケースがあります(note「独学で保育士試験一発合格の勉強スケジュール!!」)。また、まとまった一人の時間が取りにくい状況で、浴室にテキストを持ち込んで集中する時間を作ったという事例も紹介されています(保育SEE!「保育士資格を独学で子持ち主婦が働きながら取得した方法!」)。共通しているのは「過去問を軸にした要領のよい学習」と「隙間時間の徹底活用」で、まとまった学習時間が取りづらい環境でも、計画次第で合格を狙える可能性を示しています。
体験談に見る、主婦の保育士資格取得・現場復帰のリアル
前述のnote記事の投稿者は、1歳児を育てながら4月に受験を決意し、7月に受験申請、9〜10月に本格的な学習期に入り、教材費込み総額約19,700円という比較的低コストで一発合格しています(note「独学で保育士試験一発合格の勉強スケジュール!!」)。一方、保育SEE!に掲載された体験談の投稿者は、ユーキャンの通信講座と過去問演習を組み合わせ、筆記試験は2度目の受験で全科目合格、実技試験(音楽・造形)も突破しています(保育SEE!「保育士資格を独学で子持ち主婦が働きながら取得した方法!」)。いずれも個人の体験談であり、学習期間・費用・合格までの回数には個人差が大きい点には注意が必要です。「誰でも同じように一発合格できる」と一般化はできませんが、独学・通信講座いずれのルートでも、家事育児と両立しながら合格を目指した実例があることは参考になります。
保育士資格を活かした在宅ワーク・複業の可能性
保育士資格は、保育園以外の働き方にも活用できます。代表的なのがベビーシッターで、シッターマッチングサービスのポピンズシッターでは、保育士資格や経験のある方の手取り時給は1,430円〜3,000円程度とされています(ポピンズシッター「保育士資格を活かして働く:『保育士の副業』とは?」)。1対1でのシッティングとなるため、集団保育の保育園勤務とは異なる働き方・時間の自由度がある点が特徴です。このほか、単発の保育補助(月3万〜4万円程度)や、習い事講師(月2万〜3万円程度)といった選択肢も紹介されています(同出典)。
「オンラインでの育児相談」のような専門性を活かした複業については、本記事の調査で信頼できる実績データを確認することはできませんでした。現時点では明確な相場・実態は不明であり、今後の実施例が増えてくれば改めて確認が必要です。また、複業・副業を検討する際は、現在の勤務先の就業規則の確認が必須です。公立保育園に勤務する場合は地方公務員法により副業が原則禁止されているケースが多いため、注意が必要です(同出典)。
まとめ:保育士資格は「取って終わり」ではなく、働き方を選べる資格
保育士資格は、扶養内パートを含め求人自体は見つけやすく、育児経験を仕事にそのまま活かせるという点で、子育て中の女性・主婦にとって現実的な選択肢の一つです。一方で、給与水準が全産業平均より低いこと、潜在保育士が現職保育士より多いという構造的な課題があることも事実です。「資格を取ればすぐに理想の働き方ができる」と過度に期待するのではなく、自分が求める働き方(扶養内パート・フルタイム正社員・ベビーシッター等の複業)を具体的にイメージした上で、学習計画を立てることをおすすめします。資格全体の難易度・年収・将来性をさらに詳しく知りたい方は、保育士の難易度・年収・将来性まとめもあわせてご覧ください。
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よくある質問
※本記事は2026年8月時点の情報に基づきます。


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