「保育士になりたいけれど、もう40代だし今さら未経験で挑戦しても採用されないのでは」「体力的についていけないのでは」——そう感じて一歩を踏み出せずにいる社会人は少なくありません。一方で保育業界は全国的に深刻な人手不足が続いており、40代からの転職・資格取得に対する門戸は決して狭くありません。本記事では、40代・未経験から保育士を目指す際の採用実態、体力面の不安、給与の現実を、実在する調査データや体験談をもとに正直にまとめます。良い面だけでなく、厳しい現実も隠さずお伝えします。
40代から保育士を目指す人が増えている理由
40代で保育士を志す社会人の動機は、大きく分けて次の3つに整理できます。
- 異業種からのキャリアチェンジ:これまでの職種に将来性や働き方の不安を感じ、「手に職」をつけられる資格として保育士を選ぶケース。
- 子育て経験を活かしたい:自身の子育て経験を仕事に還元したい、保護者の気持ちが分かる立場で子どもと関わりたいという動機。
- 慢性的な人手不足による求人の多さ:保育士の有効求人倍率は2026年1月時点で全国平均3.88倍と、全職種平均(1.27倍)の約3倍に達しています。
保育士登録者は全国に約185万人いるとされる一方、そのうち約115万人が保育現場を離れている「潜在保育士」状態にあると報告されています。人手不足の背景には、共働き世帯の増加による保育ニーズの拡大に加え、離職理由として「人間関係」(31.5%)、「仕事量の多さ」(23.1%)、「給与の低さ」(22.1%)が挙げられており、定着の難しさが構造的な課題になっていることが分かります(参考:保育士バンク「保育士の有効求人倍率」)。求人数が多いこと自体は40代未経験者にとって追い風ですが、「なぜ人が定着しないのか」という裏側の事情も知った上で判断することが大切です。
40代未経験者の採用実態はどうなっているか
保育士の転職メディア「hoipura」の記事では、40代の保育士採用について、採用担当者へのアンケートで多くが採用対象と回答したことが紹介されています(参考:hoipura「40代の保育士は本当に転職できる?」。※調査の詳細な母数・方法までは当編集部で一次確認できていないため、正確な数値は出典元でご確認ください)。実際の採用現場でも、経験者に対しては園長・主任などのマネジメント職を任せたいという期待があり、未経験・ブランクがある40代に対しても「子育て経験や保護者対応力への期待」が寄せられているとされています(参考:ずっと保育士「40代でも保育士として転職・復職・就職は可能?」)。
ただし、これは「誰でも無条件に歓迎される」という意味ではありません。園によって年齢に対するスタンスは異なり、体力を要する乳児クラス担任よりも、幼児クラスや事務寄りのポジション、パート・時短勤務からのスタートを勧められるケースもあります。派遣・パート・アルバイトなど働き方の選択肢が広がっていることも、40代の再就職・転職を後押しする要因になっています。40代未経験からの資格取得ルートの詳細は、保育士の難易度・年収・将来性を解説した記事もあわせてご確認ください。
体力面の不安は本当か 正直な現実
40代から保育士を目指す上で、最も気になるのが体力面でしょう。ここは誇張せず、実際の声を紹介します。
あるベテランの40代公務員保育士は、ブログで「朝、ぱっちりと目が覚めるのに、体が重くてベッドから起き上がれない日がある」と綴り、田んぼでの鬼ごっこ、砂場での穴掘り、プールでの子どもの相手など、日々の身体活動の負荷を「ここ3ヶ月ぐらいの日常」と表現しています。「疲労感たっぷりな体を抱えていても仕事を休むわけにはいかない」という葛藤も語られており、この体力的な限界が退職の主要因になったと述べられています(参考:note「40代公務員保育士、体力の限界を感じる。」)。
また、46歳で管理職から保育士に転身した男性の事例では、約1年間勤務した後「年齢のせいもあってか、体力的にキツい部分があった」うえ、シフト制で土日休みがない変則的な勤務体系が長期継続を難しくしたと報告されています。この方はその後保育職を離れ、紆余曲折を経て50歳で別業種の正社員になっています(参考:ベネッセ教育情報サイト「46歳で大チャレンジ、保育士に転身も『体力キツい』」)。
一方で、40代は「体力や視力にも衰えを感じ始める」年代であることを前提に、最初から乳児クラスのフルタイム担任ではなく、短時間勤務やパートから段階的に体を慣らしていく働き方を選ぶ人も多いとされています(参考:ずっと保育士)。「体力的にきつい」という声は事実として複数存在する一方、勤務形態やクラス配置の工夫で負担を軽減している人がいることも事実です。「若い頃と同じようには働けない」という前提に立ち、園見学の際に配置基準や休憩時間の実態を確認しておくことをおすすめします。
40代からの給与水準の現実
保育士全体の給与水準は、正社員の平均年収が約427万6,300円(平均月給28万5,700円、手取り目安約23万円、賞与等84万7,900円)と報告されています。近年は着実に上昇しているものの、全産業平均との差はなお約5万3,000円あるとされ、保育士給与が全産業平均に届いていない状態が続いています(参考:保育士バンク「保育士の給料と年収はいくら?」)。2026年度は処遇改善として約5.3%の追加賃上げが予算案に盛り込まれ、年収ベースで約20万円以上の上乗せが見込まれるとされていますが、これは在職者全体の底上げであり、40代・未経験でこれから採用される人が初任給からどの水準でスタートするかは、園の給与テーブルや経験加算の考え方によって差が大きく、不明な点が多いのが実情です。
推測ですが、40代未経験で新卒同等の初任給テーブルに位置づけられる園が多いと考えられ、前職の年収から下がるケースは十分想定しておく必要があります。実際、離職理由の上位に「給与の低さ」(22.1%)が入っていることからも、給与面の厳しさは業界共通の課題であり、40代未経験者だからといって特別優遇されるとは限りません。転職前に、想定する園の給与テーブル・賞与実績・昇給ペースを必ず確認しましょう。保育士全体の年収・将来性については、保育士の難易度・年収・将来性を解説した記事で詳しく整理しています。
働きながら資格を取る方法 独学か通信講座か
社会人が保育士資格を取得するルートは、主に「保育士試験」と「指定保育士養成校(通学)」の2つがありますが、40代・仕事や家庭と両立しながら目指す場合は保育士試験が現実的な選択肢になります。保育士試験には科目合格制度があり、一度合格した科目は3年間有効なため、全科目を一度に合格する必要はなく、数回の試験に分けて計画的に合格を積み重ねることができます。
実際の体験談としては、通信講座(四谷学院)を利用した40代の方が「1日最低3セット。テキストを読む→演習トレーニング→間違えた箇所を確認」というサイクルを繰り返し、育児の合間のスキマ時間を活用して合格した例が報告されています。また、ハローワークの職業訓練制度を利用して2年間保育士養成校に通学し、受講料無料・雇用保険加入歴があれば給付金を受け取りながら学んだ例もあります(参考:保育士バンク「40代から保育士になるには?」)。仕事を続けながら独学で挑む人もいれば、通信講座で学習ペースを管理してもらう人もおり、自分の生活リズムに合わせた選び方が重要です。独学と通信講座それぞれの具体的なメリット・デメリットは、保育士資格「独学vs通信講座」を比較した記事で詳しく解説しています。
費用面では、通信講座はおおむね5万〜10万円程度が目安とされ、教育訓練給付金の対象講座であれば受講費用の20〜50%(上限10〜40万円)が支給される場合があります。対象講座かどうかは事前に必ず確認してください。給付金の対象講座や申請条件については、教育訓練給付金対象の保育士講座をまとめた記事で一覧にしています。このほか、ひとり親世帯向けの高等職業訓練促進給付金(月10万円程度)や、保育士修学資金貸付制度(入学準備金最大20万円、月額5万円)など、条件に合えば活用できる支援制度も複数存在します。
40代社会人にとっての独学・通信講座の向き不向き
40代・社会人が資格取得方法を選ぶ際の判断材料を、メリット・デメリットで整理しました。
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 独学 | 費用を抑えられる(教材費数千円〜数万円程度)。自分のペースで進められる。 | 学習計画・進捗管理をすべて自分で行う必要がある。仕事や家庭で忙しい社会人は挫折しやすい。疑問点を自己解決する必要がある。 |
| 通信講座 | 科目ごとの学習計画が用意されている。添削・質問対応でモチベーションを維持しやすい。教育訓練給付金の対象になる講座がある。 | 費用がかかる(数万円〜十数万円程度)。講座によって自分の生活リズムに合わない場合がある。 |
時間の確保が難しい社会人ほど、学習の道筋があらかじめ用意されている通信講座と、科目合格制度を組み合わせて「今年はこの科目、来年は残りの科目」と分割して受験する計画が現実的です。逆に、まとまった学習時間を確保できる、あるいはコストを最優先したい場合は独学も選択肢になります。
まとめ 40代・未経験からの保育士挑戦を判断する前に
40代・未経験からの保育士転職は、求人数の多さという意味では確かにチャンスがあります。子育て経験や社会人経験を評価する園も存在します。一方で、体力面の負担は複数の実体験からも軽視できない現実であり、給与水準も全産業平均を下回る状態が続いています。「求人があるから」だけで飛び込むのではなく、想定する園の勤務形態・給与テーブル・クラス配置を具体的に確認し、科目合格制度や教育訓練給付金などの制度を活用しながら、無理のないペースで挑戦することが、長く働き続けるための鍵になります。
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よくある質問
※本記事は2026年8月時点の情報に基づきます。


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